石丸電気はどこへ行く?
既に昨年(2008年)9月に報道されているように、2月1日付けで東京・秋葉原の電気店、石丸電気は、エディオン傘下の「株式会社エイデン」による吸収合併により、会社組織としての「石丸電気」が消滅した。まずは、これを報じた「家電Watch」の2008年9月の記事から。
株式会社エディオンは18日、グループ事業を再編する方針を発表。グループ傘下の「株式会社エイデン」が、同じくエディオン傘下の「株式会社東京エディオン」「石丸電気株式会社」および石丸電気の子会社を吸収合併する。10月6日に行なわれる株主総会で承認された後、2009年2月1日に正式に合併を行なう。
(中略)
今回の再編では、東京エディオンと石丸電気、そして石丸傘下の「東京石丸電気」「石丸電気レコードセンター」「アイアイオンライン株式会社」が合併のため消滅し、エイデンに吸収される。また、同じく石丸傘下の「アイアイテクノサービス」は、エイデン傘下の「コムネット」に吸収される。
(中略)
これにより会社組織としての「石丸電気」は消えることになるが、同社ではストアブランドとしての石丸電気を、当面のところは変更しない方針だという。また、東京エディオンが所有する関東地方の「エディオン」ブランドの7店舗も、名称はエディオンのままとなり、「エイデン」には変わらない。
「秋葉原」というと、近年はアニメやフィギュアだのメイドさんだのの印象が強くなり(実際はそれだけではないのだが)、年配者の多い職場で「秋葉原へ行く」というと、「メイド喫茶に行くのか」なんて聞かれて困ってしまう街になってしまったが、かつては家電やオーディオ機器の街で、買う前の下調べはもちろん、購入も秋葉原が当然のごとく選択肢としてあり、その中でも個人的にはよく利用していたのが、石丸電気だった。
自分が秋葉原へ行きだしたのは、石丸本店は現在のようなビルになっておらず、3階か4階にLPレコードが並んでいたし、現在の生活家電館が二階建ての建物で階段部分までテープデッキやチューナーなどのシステムコンポを並べていた頃だから、昭和50年代だろうか。
この頃は電気店で今のヨドバシのような超大型店舗はなく、秋葉原の石丸各店、今もあるラオックス本店、今はヤマダ電機になったサトームセン、現在建て替えでソフマップになってしまったヤマギワ本店などが最大級の店舗だったので、下調べにカタログをもらいに行ったり、地元では決して置いていない実機を触ってみたりするのが楽しみで、少ない小遣いの中から電車賃を払って一日秋葉原電気街めぐりをしたものだ。
中でも石丸電気は、こちらから声をかけない限り店員からは声をかけない、という接客スタイルで(当時は店内にそう表示してあったが、今はどうだろう?)、色んな機種をじっくり触ってみたい子供の自分には最高の環境だった。
今振り返ると、こちらは子供は子供なりに「オーディオファンの端くれ」として、乱暴な取扱はしないことは勿論、他のお客さんが来たらその場を譲るなど、精一杯の気を使っていたつもりだったが、店員から見れば所詮子供は子供。超高級とは行かなくてもそれなりの値段の機種をあちこち触っていれば、ハラハラすることもあったのではないかと思うが、触るなとは一度も言われたこともなかったし、質問には丁寧に答えてくれたので、嫌な思いをしたことはない。今は無くなった「あなたの近所の秋葉原」がキャッチフレーズだったSムセンでは、何を買うのかという問いに「今日は下見に来た」と言った途端、店員が急に不機嫌となり邪険に扱われたこともあったから、余計に印象が残っている。もちろん購入する時は、石丸電気へ行ったのは言うまでもない。
しかし、近年の石丸電気は正直利用することが少なくなった。通勤ルート上にヨドバシカメラがあり、大抵のものはそこで買えることが大きいのだが、価格面でも、石丸の表示価格からポイント等で割り引いた額より、ヨドバシのポイントを引く前の表示価格のほうがかなり安いということが多い状況ではさすがに足は遠のく。
更に自分にとって決定的だったのが、エディオン傘下になって「石丸が変わる! アキバを変える!」をスローガンに2007年10月に行われた全店舗の一斉リニューアル。
エディオン傘下になっても、価格面ではなんらヨドバシに対抗できていなかったのに加え、更に店員との交渉で安くなる余地までなくなっていてそれだけでもツライところに、この大改装により、どこにでもある商品しか置かなくなってしまったのがトドメを刺した。他店ではあまり実物を置いていない商品でも在庫があってすぐ買えたり、メーカーや他店で在庫僅少・又は売り切れとなっていても「石丸へ行けばまだある」ということが以前は多々あり、それが石丸へ行く楽しみであり、購入の大きな動機になっていたのだが、それがほとんどなくなってしまい、店頭に並んでいるのはそれこそ近所の中規模のコジマやヤマダで扱っているようなものばかりで、ヨドバシAkibaのほうがまだマシ、という状況ではさすがに行く動機がなくなる。
さすがにCDやDVDなどソフトのほうは、今でも少なくとも邦楽に関しては品揃えはダントツだと思うし、探し物があるなら一度は行ってみる価値があると思うが、それでも昔は廃盤モノなどの在庫はもっとあったように思うし、かつての「レコードセンター」を知っていると、品揃えの圧倒感みたいなものはないのはちょっと寂しい。
ウリだった接客のほうも、先日久しぶりに新譜のCDを買いに行って、ヨドバシその他他店では在庫していなかったマニアックなCDがちゃんと陳列してあったのを見て、「さすが石丸だ」と思ったものの、受け付けた女性店員はやる気無さそうに「ポイント貯めますかー」という感じで応対されて、ちょっとがっかりした。以前もCDを買ったときに、そこにいた店員数人が一斉に大声で「あっりがとーござぃましたぁ~」なんてビックカメラみたいな声かけをされて、どうしちゃったんだろうと思ったこともあった(その後、苦情が来たのか大声はなくなったみたいだが)から、もう昔のイメージではないのかもしれない。
冒頭の記事によると「会社組織としての「石丸電気」は消えることになるが、同社ではストアブランドとしての石丸電気を、当面のところは変更しない方針」とのことなので、しばらくは、(従来の)秋葉原の風景とも言える石丸電気の赤い看板は残りそうだが、今後の動向は分からない。それでも、少なくとも関東ではエディオンブランドなんてまったく浸透しておらず、「石丸電気」の知名度のほうがずっと上のはず。なんとかうまく立て直してもらいたいものだが。
<参考記事>
・エディオンと石丸電気が資本提携 -ITmedia News
・石丸電気、秋葉原地区で一斉リニューアル - ITmedia News
・家電Watch:エディオン、石丸電気など関東地区の子会社をエイデンへ移行
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