熱闘甲子園は「今年も感動にこだわる」そうで…
明日8/6(土)、夏の高校野球(正式には、第87回全国高校野球選手権大会)が始まるとともに、地元関西圏ではABCによるラジオ・テレビの実況中継と、夜には、テレビ朝日・ABC系全国ネットの「熱闘甲子園」の放送が始まる。(※なお、開会式もABC発の全国ネットで中継。決勝戦についても同様。)
この「熱闘甲子園」。残念ながら、最近はせいぜい流し見するだけでマトモには見なくなってしまった。一つには放送時間が遅くなったことや、自分自身の高校野球自体への興味が減ったということもあるのだが、もう一つ大きな理由は、番組の性格が変わってしまったからだ。
「熱闘甲子園」は1981年のスタート。当時は「熱闘」の放送期間中は他のレギュラー番組を遅らせて平日は21時(後に22時)、土日は23時開始の30分番組として放送。番組司会はABC安部憲幸アナ、2年目からは中村哲夫アナが担当していた。
この頃の「熱闘」は、その日行われた全試合を公平に、試合経過と見所をコンパクトにまとめて放送していたため、他のニュース番組のスポーツコーナーではどうしても時間的に拾いきれないような、いわゆる「目玉・注目のカードや選手以外」も、映像として見られるのがウリで、いわば最近までテレビ朝日系列で放送されていた「大相撲ダイジェスト」や、「プロ野球ニュース」(フジテレビ系)のような役割(※)を担っている部分が大きかったように思う。
この頃の「熱闘」の番組構成は毎年大きくは変わらず、オープニング・エンディングテーマ曲も、大阪府立淀川工業高校吹奏楽部が演奏する『君よ八月に熱くなれ』がずっと使われていたため、番組のイメージも定着。今でも、かつて「熱闘」を見ていたという人に聞くと、曲名は知らなくても「あのブラスバンドの…」というくらい知られている曲だ。地元ABCエリアであれば、昼間の試合の中継時にも歌が流れていたから、定着度はより高いだろう。
そんな「熱闘」が変わりだしたのが、1989年。
オープニングのスタイルが変わり『君よ八月に熱くなれ』も消えた。まださすがに試合経過はちゃんと伝えていたと記憶しているが、試合以外の舞台裏とか、特定個人にスポットを当てた特集が幅を利かせてくる(それまでは雨天中止になったり、決勝に近づくにつれ、一日の試合数が減って番組時間に余裕が出てきてからしかやらなかった。)。
そのあとは、ほぼ毎年と言ってよいほど番組スタイルが弄られ、番組司会も毎年交代。ナレーションによるドキュメンタリー方式や、毎日日替わりのタレントキャスター制など試行錯誤がはじまり、そしてどういうきっかけなのか長島三奈が起用され、その後いつのまにか「高校球児の母」なる珍妙な肩書きとともに定着していくことになるのだが、肝心の番組スタイルのほうは、いつの間にか試合経過そっちのけで、特定の球児・チームにスポットを当てたミニドキュメントが多数挿入。よく言われる「密着取材」が、「試合」ではなく、「試合へ出るまでの球児」「試合に負けた後の球児」ばかりになり、それが長島美奈のナレーションつきで連日のように放送されるようになってしまった。
番組スタイルの試行錯誤と変更は、番組スポンサーの松下電器からコカコーラへの交代時期と一致していることからして、番組が狙うターゲットが、「地元のチームを応援するような高校野球好き」の人達から、コカコーラのターゲットである、「かっこいい高校球児」が好きな中高生あたりにスイッチしたからなのかとも思うが、結果として、単なる「高校球児ファン」のための番組と化してしまったように思う。
現在の「熱闘」を見る限り、試合経過を追いたい人にとっては、30分もかけて他のスポーツ番組とたいして変わらないような試合映像しか見られないのであれば、別に「熱闘」を見る必要もないということになってしまう。
現に、かつては「熱闘」を見ていたが今は見なくなったという人は、私と同年齢かそれ以上の人が多いこともあるが、「なんかちっとも試合を写してくれないんだよね」というようなことを言うところを見ると、かつての「松下電器」時代の「熱闘」を見ていた層は特に、今の「熱闘」に不満があるのではないか。
毎年、「今年こそは原点に帰ってくれるのではないか」と淡い期待というか、もはや単なる興味本位(苦笑)で番組を見るのだが、「速報!甲子園への道」などで流れた番宣スポットでは、今年も笑顔の長島三奈さんのナレーションでこのように流れていた。
「25年目も『熱闘』は感動にこだわります。」
どうやら今年も、『熱闘』は、試合経過よりも感動路線で行くようです・・・・。
※…今でこそ多くの番組でパリーグの試合経過・結果を映像つきで放送するが、昔はセリーグだけ、場合によっては巨人戦だけを映像つきで放送し、パリーグの試合は試合結果の字幕だけで済まされていたのだが、「プロ野球ニュース」が初めて、原則として全試合を映像つきで伝えた(らしい)。
(追記)
・下記のABC公式「熱闘甲子園」のページによると、今日(※8/6)の「みどころ」として、
49代表勢ぞろいの開会式
第1試合 鳴門工(徳島) 対 宇都宮南(栃木)
第2試合 青森山田(青森) 対 智弁和歌山(和歌山)
第3試合 天理(奈良) 対 国士舘(東東京)
夏詩 中身は内緒、お楽しみに
熱闘25年の歴史 熱闘ストーリー
…とあるのだが、開会式と試合は当然として、最後の一行「熱闘25年の歴史 熱闘ストーリー」というのが気になる。昔の「熱闘甲子園」の映像や音楽が紹介されるような企画だと喜ばしいのだが、果たして?
(単に「25年の感動ヒストリー」と題したお涙頂戴企画の可能性もあるが…)
<参考>
・ABC公式「第87回 全国高校野球選手権大会」のページ
・ABC公式「熱闘甲子園」のページ
・「THP blog×2005夏の甲子園特集」さんの6/19の記事 夏の甲子園名曲の殿堂(1)『君よ八月に熱くなれ』
<ラテログ内関連記事>
・夏の高校野球中継と関連番組
・「熱闘甲子園」今年のテーマ曲
・高校野球決勝戦は民放でも放送
・高校野球決勝戦が高視聴率。一方で…
・近年の「熱闘甲子園」のテーマソングを集めたCDが発売されている。詳しくは下記のリンクへ
・その他高校野球中継の関連モノ
| 固定リンク
コメント
私の初日の熱闘に関する感想は2つです。
1.アップが多くて展開が分からない。
2.スポットを当てた人以外はおまけ?
です。
特に1はひどいです。
投稿: さと | 2005.08.07 21:21
初回だけは例によって録画しておいたのを見ましたが、おっしゃるとおりの内容で、基本構成は変わってませんでしたね。
あとちょっと気になったのは、長島三奈さんが正面を向いて語っている時に、なぜか真横からかなり長い間映すカットが何度かありましたが、ああいう無駄な演出は落ち着かないので個人的にはやめて欲しいです。
三奈さんの発音と言うのか滑舌と言うのかが悪く、ただでさえあまり心地良くないだけに、普通にしたほうが良いのではと思うのですが。
(…が、こういう意見は少数派なんでしょうかね。毎年変わらないところを見ると。)
投稿: tabo | 2005.08.09 02:05