アニメ「プレイボール」感想など
以前5/28と7/2に紹介したとおり、アニメ「プレイボール」が放送されているので、第4話までみた時点での感想などを。
7/2のコメントでも書いたのだが、キャラ(絵柄)は、デジタル彩色のハデな色あいが残念だが、谷口をはじめとして原作の絵の雰囲気は出ている。一方でキャラの雰囲気や声については、現代に合わせたのか原作の設定よりだいぶ軽いと言うか、若く(幼く)設定されているように感じる。原作が書かれた時代の高校生(特に3年生)は、今の高校生よりある意味ずっと「大人」なのではないか。
谷口をサッカー部へ入部させ、しかし野球への想いを捨てきれないことを理解するエピソードにしても、原作は展開がゆっくりしているせいもあって、キャプテン相木の谷口という人間を理解し、その心境を思いやる場面はもっと大人の目線だし、野球部キャプテンの田所も、投げられないというハンディを背負った谷口が毎日野球部を眺めていた頃から、谷口が野球をやればつらい思いをするということを考えて、言動は乱暴なようだが、実はとても谷口のことを気を使っているのだが、アニメ版ではどうしても時間が無いせいか、あまり谷口を良くは思っていないようにも見えてしまう(ネット上で書かれた感想を読んでいると、原作を読んでない人の中には、そのように見ている人も実際いるようだ。)。
ストーリー展開については短い時間の制約の中では、よく作ってあるほうだと思うが、最も違和感を感じたのは、京成高と対戦する第4話。公式サイトのストーリー展開の紹介ではこんな感じである。
いよいよ京成高との試合が始まった。だが、墨高のバッターは力任せにバットを振り回すばかりで、何の作戦もない。見かねた谷口は、偵察の際に書いたノートを田所に渡す。早速、そのノートに従って、指示を出す田所。見事、作戦は当たるものの、谷口の言いなりの田所に、部員達は不満を募らせる。カーブの打ち方を指示する谷口に、「だったらお前が打ってみろ!」と食ってかかる佐々木。戸惑う谷口に、田所は代打に出るよう告げる。
アニメでは、京成高に対して優位な展開になっていても、部員みんなから「1年生のくせに生意気」みたいな雰囲気で谷口が認められていないばかりか、「俺達考えて野球をやったことないもんな」などと言い出す墨高メンバー達、そして挙句の果てに「谷口の言いなりになっている」と田所まであからさまに非難されるという展開だ。
しかし原作では、野球を出来さえすればよい部員たちが谷口の真剣に勝負に取り組む姿勢とのギャップに戸惑いを感じるシーンと、2度バントを命じられた部員が反抗するシーンはあるが、アニメ版のように部員全体から反抗されるような雰囲気ではなく、谷口の作った偵察メモによってバッターはヒットを打ち、ピッチャー中山は京成高打線を抑えていることに対し、ベンチの控え部員からも「やっぱり谷口のメモのおかげかね」と、試合中から谷口のことが墨高メンバーにも理解されているし、中山も自分ひとりの力で投げ勝っているなんて思っていない。
余談だが、原作の中山はプライドはあるが人は悪くない(だから、次の東実戦へ挑む時も、がむしゃらに向かっていく谷口の姿勢に真っ先に理解を示す)という描き方だが、アニメ版は顔も違う上、谷口の入部当初から谷口に対して反感を持っていて、かなり底意地の悪い人物のように描かれているのはなぜだろう。
原作との違いが大きく出ている部分で象徴的なのが、4話の終わりの部分、貴重な得点機に谷口が代打に出るシーン。
アニメ版は、これまでの雰囲気を引きずり、カーブの打ち方を指示する谷口に、「だったらお前が打ってみろ!」と佐々木が食ってかかるし、「そうだそうだ」と部員も加勢する。しかも代打に谷口を起用することに、みんなが不満に思っているという展開だ。
しかし原作は、佐々木がカーブの打ち方が理解できなくて困るシーンとその後谷口が代打に出る展開自体は同じだが、そこへ至る背景は全く違う。
原作では、谷口の代打については、京成高のピッチャーが配球を変えてきたため、これ以上他の墨高メンバーでは得点できない以上、唯一カーブを打てそうな谷口に代打を任せるべきだ、という田所の話にみんなが納得しているし、メンバーの不安はむしろ、代打に出た谷口が守備についても投げられないことなのだが、これについても、田所は「今日は外野には1本も飛んでない、外野に行くかどうかは分からないのに貴重な打席のチャンスを無駄にするわけはいかない」と説明して、みんなの期待の中、谷口は打席に入っているのだ。
ここらへん、そもそも原作と描き方が違うのと、それまでに省略してきた部分が積み重なって、アニメ版の谷口について「場がよめない人」となんて感想すらあるのは、ちょっと残念なところだ。
全体として感じるのは、やはり1クールという制約からか、アニメと漫画の違いなのか、原作のかなりゆっくりした展開を再現することの難しさだ。(逆に、原作に忠実にアニメ化すると、とんでもなく間延びしてしまうのかもしれない。現に、原作よりもかなりカットしてあるサッカー部入部から退部に至るまでの話でも「時間をかけすぎ」という感想も見かけたから、アニメ版はこれでよいのかもしれない。)
原作を読んでいる人は頭の中で省略されたストーリーを補いながら見ているのでいいかもしれないが、原作を読んでいない人だと違った感想を持つかもしれない。アニメを見て興味を持たれた方は、機会があればぜひ原作を読んで欲しい。ちばあきおさん独特の、じっくりと書かれた独特の味わいによって、きっとアニメ版とはまた違う感想を持たれるのではないかと思う。
<参考>
・「プレイボール」公式WEBサイト
・「日々の記録」さん プレイボール #1 プレイボール #2
・「アニメ批評空間 (AnimeScape)」さん プレイボール・第1話
・「ANQ Ritzberry Fields」さん 第1話 第2話 第3話
・「Precious Prize Platz -Annex- 」さん プレイボール 第1話 第2話 第3話 第4話
<ラテログ内関連記事>
・「プレイボール」が初めてテレビアニメ化(5/28の記事)
・アニメ「プレイボール」放送枠が決定(7/2の記事)
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