このニュースが報じられてからもう数日がたって今更の感もあるが、ラジオに関するこれだけのニュースには、やはり触れざるをえない。
インターネット関連会社・ライブドアの堀江貴文社長は8日夕、東京都内で記者会見を開いた。同社が取得したラジオ局のニッポン放送(東京証券取引所2部上場)の発行済み株式の35.0%を「長期保有する」とし、同放送が筆頭株主となっているフジテレビジョン(東証1部上場)を中核とするフジサンケイグループと資本・業務両面で提携して、ネットとテレビ・ラジオを融合したビジネスをめざす方針を表明。同放送を子会社化するために同放送株を公開買い付け(TOB)中のフジテレビは反発しており、フジサンケイグループの経営主導権をめぐる争いが本格化する。
情報元:ライブドア、ニッポン放送株35%取得 フジテレビ照準 - asahi.com : 経済
以上は2月8日の報道だが、この後フジテレビ側も対抗策を打ち出しており、事態が今後どう動いていくのかは現時点ではまったく分からない状況である。
ここ数日間のライブドアやフジテレビの状況、関連の動き等については、zig zag road さんのところやさにぼー さんのところが、株を取得された当のニッポン放送の反応についてはオフ_ザ_グラウンドさんのところが詳しいのでそちらに譲るとして、堀江社長(ホリエモン)はこれでラジオをどう変えていこうとしているのだろうか。
そもそもホリエモンの狙いは、実はニッポン放送というよりはフジテレビにあるのだろうが、断片的な報道を見る限り、ラジオについてはネットとの相乗効果をうたうぐらいで、具体的な話は出てきていないように見える。私が見つけた中では、 「ニッポン放送のWebサイトでは、ニッポン放送の情報しか見られない。これは、機会損失。フル活用していない」として、放送局のWebサイトで、ポータルサイトのようにIDを発行しさまざまなサービスを提供、収入を得るという構想ぐらいか。これとて、直接番組自体をどうにかするというものではない。
確かに今のラジオ局のWebサイトは、ある意味純粋というか正統派というか、局の看板として番組情報やパーソナリティ情報、番組関連イベント情報がメインであり、物販を前面に押し出したものはほとんどない。まずは放送自体を聴いてもらうことに主眼を置いているといえよう。これをネットと連携して物販・サービスに活用するとなると、どんなことが考えられるか。
・ニュースのヘッドラインや天気予報等もWebサイトに表示する
→今でも大なり小なりやっている。
・パーソナリティーへの質問や番組へのリクエストを受け付ける
→今でも普通にやっている。
・ライブ中継でスタジオの様子が見られる
→今でも一部でやっているが、同じく権利関係でブツ切れ。微妙にリアルタイムではない。
・今ラジオでかかっている曲目をリアルタイムに表示し、タイトルをクリックするとそのCDが買える
→今でもやっている(FM局に多い)
・放送のネット配信で遠距離受信しなくても番組が聴ける
→今でもやっているが権利関係が複雑で、音楽はカット。しかもダイジェストだったりする。
・聞き逃した過去の放送が聴ける
→たとえやっても上と同じ。
…我ながら発想が貧困で申し訳ないが、なかなか新しいアイデアを出すのは難しい。
この中でネット上では、東京の放送をクリアに聴きたい地方の人からネット配信に期待を寄せる声がいくつか見られたが、これは正直期待できないのではないか。
まず音楽をはじめとして権利関係が複雑なことから、現状でも一部で行っているネット配信は、パーソナリティのトークだけをブツ切りで放送するお粗末なものとなっている。ひどい場合は番組のテーマ曲やジングルなどもカットされており、これでは「番組」とはいえない。
一方ネットでも聴けることを売りにする番組は、権利関係に抵触しないような番組作りになってしまう(大抵は、最初から番組の一コーナーをネット配信できるような内容だけで構成したコーナーにしていることが多い)という本末転倒状態にあり、そんな制約がある番組と言うのは、えてして面白くないのである。
そして仮にこのような権利関係をクリアして放送できたとして、今度はスポンサーとの関係、地方局の存在意義という問題が出てくる。この話はどうしても長くなるので別の機会にまた書きたいと思うが、単純に言えば「ネットで聴けるならラジオを聴く必要がない」こととなり、ラジオ放送にスポンサーがつかなくなる、ということである。これでは放送局はオシマイである。
加えて気になるのは、特に今のラジオ局を支えているのは圧倒的に中高年齢層、次が学生時代に深夜放送でラジオに親しんだ経験のあるその下の層だということである。もちろん中高年齢層の人たちでもインターネットを使いこなす人は大勢いるであろうが、こういう人たちは何もインターネットを見るまでも無く、ラジオを聴く習慣ができている人たちである。そしてラジオは習慣で聴くものだからこそ、番組の雰囲気や内容が刷新されることは好まない。
近年のニッポン放送は改編期ごとに番組内容を大幅に変更し、新しいリスナーは獲得できず、一方長年聴いていたリスナーも離れていくという悪循環に陥っているように見えるのだが、ネットとの融合を図るがために急激な番組内容の変化を起こすことは、かつての「オールナイトニッポン」3部制の失敗を見ても分かるように、危険ではないだろうか。
もちろんそうは言っても、新しいリスナーを獲得していかないとジリ貧になるのは目に見えている。そして、Webサイトをいくら充実させようと、ラジオに関心がない人は、そもそもラジオ局のWebサイトなんて見ないのだから、話にならない。
そこで、ラジオに関心がある人もそれ以外の人も両方取り込んで、ラジオに関心がない人には自然とラジオに目を向けてもらい、ラジオに関心がある層には、サイトで買い物等をしてもらう、そのために、ニュースや天気予報などと同列で、お勧め番組や今しゃべっているパーソナリティが表示され、関連の品物の購入もできるようなことにする、、、なんていうのがホリエモンが考えているWebサイトの「ポータルサイト化」なのかもしれない。
ブラウザを立ち上げた時に最初に表示される、いわゆる「ホームページ」は、今多くの人はヤフーのページになっているそうだが、代わりにニッポン放送(ライブドア)のページが設定されるようなことに果たしてなってくるのだろうか。
(まあ、現時点では最終的なホリエモンの目的も、今後の出方も分からないので、なんともいいようがないのだけども。)
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